あの冬、長野県白馬村のコブ斜面は激しい雪に見舞われていた。劣悪な視界を物ともせず、一気に斜面を攻め下りていった1人の少女がいた。1998年長野オリンピックの女子フリースタイルスキー・モーグル決勝。プレッシャーで各国の強豪が失速する中、里谷多英の滑りは極限まで研ぎ澄まされていた。豪快なツイスターとコザックを繰り出し、ゴールドメダルを確定させた瞬間、日本中が狂喜乱舞した。
当時、NHKの生中継を通じて全国に届けられた映像は、単なるスポーツの快挙にとどまらないインパクトを与えた。シャンパンを豪快に頭から浴びて歓喜を爆発させる姿は、従来の「謙虚で控えめな日本人アスリート像」を根底から覆す。圧倒的な個性を全開にした戦いぶりは、見る者の心を掴んで離さなかった。