20世紀半ば、国際社会は史上例を見ない大規模な作戦へと踏み出した。世界保健機関(WHO)が1968年に立ち上げた世界根絶計画は、単なる医療支援にとどまらず、地球規模での監視網構築を意味していた。感染者が出た地域を迅速に特定し、その周辺住民へ集中的に接種を行う「封じ込め戦略」が功を奏したのだ。
1977年にソマリアで最後の自然感染例が報告された後、3年間の厳格な調査期間を経て1980年、根絶宣言が正式に採択された。公衆衛生学の歴史において、ひとつの病原体を地球上から完全に追いやったこの出来事は、現在も語り継がれる前人未到の金字塔である。