放火によって失われた舎利殿ですが、現在の私たちは再びその黄金の輝きを目にすることができます。この奇跡的な復元は、卓越した伝統工芸職人たちの執念と、科学的検証の賜物でした。
焼失から5年後の1955年(昭和30年)、明治時代に行われた解体修理の際の詳細な図面と古文書を基に、寸分の狂いもなく舎利殿が再建されました。しかし、当時の再建費用(約3000万円)の制約もあり、貼られた金箔は極めて薄く、昭和40年代に入ると雨風によって金箔が剥落。下地の黒漆が露出する痛ましい状態へと後退してしまいます。
そこで断行されたのが、1986年(昭和61年)から1987年(昭和62年)にかけて行われた「昭和の大改修」です。
- 総工費:約7億4000万円(当時)
- 使用された金箔の量:重量にして約20kg
- 金箔の仕様:通常の金箔の約5倍の厚みを持つ「五毛色(ごもういろ)金箔」(純度約98%)を約20万枚使用。
- 漆の下地処理:岩手県浄法寺産の最高級国産天然漆を幾重にも刷毛塗りし、耐候性を極限まで高めた上で箔押しを実施。
さらに記憶に新しいのが、2020年(令和2年)秋から冬にかけて実施された「令和の大改修」です。この工事では、金閣の屋根を覆うサワラの割板である「柿葺(こけらぶき)」が約18年ぶりに全面葺き替えられました。同時に、屋根頂上に鎮座する金銅鳳凰(ほうおう)の金箔補修と全体的なクリーニングが行われ、2021年以降、現在私たちが目にする一段と冴え渡る黄金のコントラストが完成しました。
私たちが今日目撃している金閣の姿は、単なる古い遺構ではなく、日本の伝統漆芸・金箔工芸が昭和から令和へと技術をバトンタッチして守り抜いてきた「生きた文化遺産」に他なりません。