プロのイラストレーターが腕組みを描く際、いきなり腕のアウトラインを描き始めることはまずありません。破綻を防ぐためには、腕組みアタリの取り方を段階的に組み立てる工程が必須となります。
最初に行うべきは、胴体を単純な箱形または円柱として捉え、胸の中央を通る正中線とアンダーバストのラインを確定させることです。この基準線が曖昧なままでは、腕がどの深さで重なっているのかが判別できなくなります。次に、左右の肩(肩峰)と鎖骨の位置を決めます。腕を組む際は、リラックスした状態よりも肩がやや上がり、前方へ押し出されるため、鎖骨のラインを水平ではなく緩やかなV字として意識するのがポイントです。
骨格の土台が決まったら、腕を「上腕・前腕・手」の3つのブロックに分解し、交差の優先順位を設定します。腕組みは必ず「どちらかの腕が上になり、もう一方が下から潜り込む」という明確な前後関係を持っています。例えば、右腕が上に来る場合、右の前腕が左の上腕・前腕の手前に重なり、左手は右の二の腕や脇の下に隠れる、あるいは肘の下から指先だけが覗く形になります。この腕の構造とデッサンにおける前後関係(オーバーラップ)をアタリの段階で単純な筒の重なりとして整理しておくことで、後のペン入れで線の辻褄が合わなくなる事態を完全に防ぐことができます。