調剤薬局で薬を受け取る際、自分より後に来た人が先に呼ばれたり、薬剤師から「病院の先生にお薬の確認をしていますので、もう少々お待ちください」と声をかけられたりすることがあります。このとき現場で行われている疑義照会とは、医師や歯科医師が発行した処方箋の内容に疑問点や不明な点があった場合、薬剤師が処方医へ直接問い合わせて処方意図を確かめる業務を指します。
医療情報システム大手のウィーメックス株式会社(旧PHC株式会社)が運営する「メディコム」の解説資料および厚生労働省の調査データによると、全国で発行された処方箋のうち約3.5%が疑義照会されていると報告されています。一見すると少ない割合に思えるかもしれませんが、全国の薬局で年間約8億枚の処方箋が応需されている実態に照らし合わせれば、年間で実に2,800万件以上もの「待った」が現場でかけられている計算になります。
なぜ、薬剤師はそこまで徹底して医師の処方をチェックするのでしょうか。その根拠は、単なる業務マニュアルではなく、国の法律である薬剤師法第24条の義務にあります。
同法第24条には、「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない」と明記されています。つまり、処方箋の記載に少しでも安全性への懸念や不備があるにもかかわらず、薬剤師が「たぶん大丈夫だろう」と自己判断で調剤を進めることは明確な法律違反となるのです。
そして、これこそが調剤薬局の待ち時間が長い真相に直結しています。薬剤師が疑問点を発見して病院へ電話をかけても、相手の医師はまさに次の患者を診察している最中であることがほとんどです。病院の受付や看護師を通じて伝言を頼み、医師の手が空いて折り返しの電話が来るまでに15分〜30分以上を要するケースは珍しくありません。待合室での長い沈黙の裏では、患者の命と健康を守るための法的な確認作業が同時進行で行われています。