2017年、上野三碑(こうずけさんぴ)の一つとしてユネスコ「世界の記憶」に登録されてから、今年で9年が経過した。なぜ、群馬の山中にある石碑が世界的な価値を認められたのか。それは、漢字文化が東アジアの東端でどのように受容され、独自の社会秩序を形成する道具となったかを証明する唯一無二の物証だからだ。
中国から伝わった漢字を用いながらも、そこには日本独自の「てにをは」や、当時の話し言葉のニュアンスが混じる。文化のハイブリット化が、1300年前の群馬で既に起きていた。この普遍的な文化変容のプロセスこそが、世界の研究者を引きつけてやまない理由だ。