インターネット上の検索エンジンでは「亡くなった 人工 膀胱 芸能人」というキーワードで多くの著名人の名前が浮上します。しかし、報道各社の公表資料や公式アーカイブを精査すると、そこには「人工膀胱(ウロストミー)」と「人工肛門(コロストミー)」の完全な混同、さらには生存している著名人に対する根拠のない死亡説が紛れ込んでいます。
その筆頭が、名優・渡哲也さんです。渡さんは1991年に直腸がんの手術を受け、人工肛門(ストーマ)を造設しました。当時、人気絶頂のアクションスターがオストメイトであることを公表した事実は日本中に勇気を与え、公益社団法人日本オストミー協会の活動にも多大な理解をもたらしました。2020年に肺炎のため逝去されましたが、渡さんが装着していたのは「人工肛門」であり、「人工膀胱」ではありません。同じオストメイト(ストーマ保有者)という総称から、ネット上で情報がすり替わった典型例です。
もう一つの重大な誤解が、元フジテレビアナウンサーの小倉智昭氏に関する情報です。小倉氏は2016年に膀胱がんを公表し、2018年11月に膀胱全摘手術と「代用膀胱造設術」を受けました。小倉氏の場合は腹部にパウチ(蓄尿袋)を貼るストーマではなく、自身の回腸を使って体内へ新たな膀胱を再建する術式を選択しています。その後、肺への転移や左腎臓の全摘などを経験しながらも、2026年現在に至るまでメディア出演や執筆活動を続け、自らの壮絶な体験を赤裸々に発信しています。ネット検索で「亡くなった」とサジェストされる現象は、病状の重さから生じた不確かな噂の拡散に過ぎません。
また、大衆演劇界のスターや落語家、声優など、公式には死因が単に「がん」や「多臓器不全」とだけ発表され、人工膀胱の手術を受けていたかどうかが非公表のまま伏せられているケースも多々あります。排泄に関わるプライベートな医療情報は、本人の遺志や遺族の配慮によって伏せられるのが一般的であり、裏付けのない憶測を事実として語ることは厳に慎まなければなりません。