栄養学の現場において、ビタミンCは最もデリケートな水溶性ビタミンの一つとして知られています。ネット上では「レモンティーに熱湯を注ぐとビタミンCが全滅する」「一度にサプリメントを大量に飲めば美白になる」といった極端な言説が散見されますが、これらには科学的な精査が必要です。
まず加熱調理ビタミンC損失の理由ですが、アスコルビン酸は熱と酸化(アスコルビン酸オキシダーゼなどの酵素や空気中の酸素)によって酸化型アスコルビン酸(デヒドロアスコルビン酸)へと変化し、さらに分解が進むと効力を失います。ただし、短時間の加熱や80℃前後の湯であれば即座にゼロになるわけではなく、実測データでは数分程度の加熱であれば60〜80%程度が残存します。問題は加熱温度そのものよりも、水溶性であるがゆえに茹で汁へ溶け出してしまう「水没損失」です。レモンの栄養を余すことなく摂るには、生食かスープごと摂取できる調理法が合理的です。
また、ビタミンC過剰摂取と副作用についても正しい理解が欠かせません。厚生労働省が定める『日本人の食事摂取基準』において、成人(18歳以上)のビタミンC1日の推奨摂取量は100mgと設定されています。ビタミンCは水溶性のため、一度に1,000mg〜2,000mg以上を摂取しても腸管での吸収率が低下し、余剰分は尿中に排泄されます。しかし、短時間に数千ミリグラムのサプリメントを摂取すると、浸透圧の上昇によって一過性の下痢や腹痛、胃腸の不快感を引き起こすリスクがあります。また、体内でシュウ酸へと代謝されるため、長期間の過剰摂取は尿路結石のリスクを高める懸念が医療現場から指摘されています。