墨田区や江東区の下町エリアには無数の名酒場が存在しますが、その中でも「もつ焼き稲垣」が別格の存在感を放ち続ける理由は、単なる安さだけではありません。暖簾をくぐると広がるのは、厨房から立ち上る香ばしい煙と、威勢の良い店員の声、そしてグラスを傾ける客の笑顔が交錯する圧倒的な熱気です。本所吾妻橋の本店は、奥へ奥へと伸びる迷路のような広大な座敷やカウンターを備え、まるでひとつの「酒場テーマパーク」のようなスケール感を誇ります。
地元住民への取材によると、親子三代にわたって通い続ける常連も珍しくありません。大衆酒場の敷居の低さを保ちながら、提供される料理のクオリティは割烹にも引けを取らない丁寧な仕込みが施されています。職人が一本一本炭火で焼き上げる串の鮮度、毎日大鍋でじっくり炊き上げられる煮込みのコク。これらが一人あたり2,000円〜3,000円台の予算で心ゆくまで味わえる点こそ、時代を超えて人々を惹きつける最大の要因です。