スタジアム観戦者やテレビの視聴者の間で頻繁に話題にのぼるのが、「アディショナルタイム(追加時間)が以前より格段に長くなった」という現象です。SNS上でも「前半なのにアディショナルタイムが7分もある」「後半の表示が+11分で実質もう1試合やっている気分になる」といった驚きの声が日常的に見受けられます。
現場で何が起きているのか。その発端は、FIFA(国際サッカー連盟)審判委員会が2022年のカタールW杯以降、世界規模で推し進めている「実質プレー時間(インプレー時間)の厳格な確保」という方針にあります。
かつてのサッカー界では、試合中にどれほど遅延行為や選手交代があっても、アディショナルタイムは前半で1〜2分、後半でも3〜4分程度追加されるのが慣例化していました。しかし、調査機関の分析によると、90分の試合時間の中で実際にボールが動いている時間は平均して約55分〜60分程度に過ぎず、残りの30分以上はファウル後の小競り合いやゴール後のパフォーマンスで失われていた実態が浮き彫りになりました。
現在採用されている最新の計時ルールでは、第4審判と主審がストップウォッチを用いて以下の停止時間を1秒単位で積算しています。
- 選手の交代手続き:1回につき約30秒〜40秒を計上
- ゴール決定後のセレブレーション:選手が自陣に戻りキックオフするまでの全静止時間(約1分〜1分30秒)
- 負傷者のピッチ上での手当・担架搬送:完全にプレーが止まっていた時間
- VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入:オンフィールドレビューや交信にかかった全実時間
- 意図的な時間稼ぎ(ディレイ・オブ・ゲーム):スローインやゴールキックを遅らせた浪費時間
この厳格化の結果、前半だけで負傷治療やVAR検証が重なると、「前半+6分〜8分」がごく当たり前の光景となりました。観客目線では「試合がなかなか終わらない」と感じる場面が増加した一方、意図的な時間稼ぎ(ピッチ上でのいわゆる“痛がったふり”)戦術を無力化し、フェアプレーを担保するための構造的進化といえます。