午前6時を回る頃、仕込み場はすでに熱気に包まれている。仕入れられたばかりの新鮮な穴子は、熟練の職人の手によって一瞬で捌かれていく。包丁が皮を滑る軽快な音、串を打つ規則的なリズム。長年の経験に基づく無駄のない動きには、思わず息をのむ美しさがある。
焼きの工程こそ、まさに命が吹き込まれる瞬間だ。赤々と熾された炭火の上で、穴子がじっくりと脂を落とし、身をくねらせる。立ち上る煙を巧みにコントロールしながら、創業以来継ぎ足されてきたタレへと潜らせる作業が何度も繰り返される。外側はパリッと香ばしく、中はふっくらと柔らかな仕上がり。この唯一無二の食感は、自動化された現代の工場ラインでは決して再現できない職人技の結晶である。