日本語の「遊撃手」という言葉の深みを理解したところで、視点を本場アメリカに移してみましょう。そもそも英語のショートストップ語源英語において、なぜ「短い(short)」「止める(stop)」という単語が組み合わされたのでしょうか。ここにも、現代のファンが驚くべきショートストップの歴史が存在します。
19世紀中盤、1840年代にニューヨークの「ニッカーボッカー・ベース・ボール・クラブ」でルールが整備された初期の野球において、ショートストップというポジションは内野手ではありませんでした。当時の野球ボールは手製で極めて軽く、外野手の肩力では内野までダイレクトに送球を返球することが困難だったのです。
そこで、名選手であり医師でもあったダニエル・ルシウス・アダムズ(通称ドク・アダムズ)が、外野手と投手の間、すなわち「浅い外野(short field)」に位置を取り、外野からの返球を中継して打者走者の進塁を食い止める(stop)役割を考案しました。つまり、元々は「浅い位置で打球や送球をストップさせる中継要員」=Short Stopだったのです。
その後、ボールの製球技術が向上して反発力と耐久性が増すと、外野手の返球能力が向上したため中継要員の必要性が薄れました。一方で、右打者が引っ張る痛烈なゴロが二塁と三塁の間を抜けていくケースが多発したことから、ドク・アダムズらはショートストップの守備位置を次第に内野寄りにシフトさせていきました。これがショートの守備位置の変遷の真相であり、「第4の外野手」から「内野の要」へと劇的な進化を遂げた証拠です。