大谷石地下採掘場跡の坑内へ続く階段を下りると、外光が届かない仄暗い空間に、天井高十数メートルを超える柱状の岩肌が立ち並ぶ光景が目の前に広がります。「大谷の地下神殿」という通称でSNSやメディアを賑わせるこの空間は、1919年(大正8年)から1986年(昭和61年)までの約70年間にわたり、約1,000万個もの大谷石が掘り出されたことによって形成されました。
採掘場の内部を異世界たらしめている最大の要因は、採掘方法の進化がそのまま岩肌のテクスチャとして残されている点です。手掘り時代の規則正しいツルハシの打撃痕と、昭和30年代以降に導入された機械掘りによる平滑なスリットラインが交錯し、人間の労働の集積が幾何学的な美しさを生み出しています。照明デザイナーによって計算された間接光が岩肌の陰影を際立たせ、水が溜まったクリアな水面が天井を鏡のように反射する様子は、単なる産業遺構の枠を超えた現代アートのような静謐さを醸し出しています。