境内に入る手前で立ち止まったとき、視覚的に最もわかりやすい標識となるのが門の構造だ。神社では、神域と俗世を隔てる結界として「鳥居」が立ち、朱塗りや素木の柱が空を仰ぐ。一方、寺院の入口には「山門(三門)」が構えられ、重厚な屋根瓦と二層構造の木組みが威厳を放つ。
配置されている像にも決定的な違いがある。神社の参道を守るのは狛犬や狐などの神使であり、寺院の門前で睨みを利かせるのは金剛力士像(仁王像)だ。また、敷地の奥に鎮座する中心的存在も異なる。伊勢神宮に代表される神社には、鏡や剣といった御神体が本殿の奥深くに秘められており、参拝者が直接その姿を見ることはない。対照的に、東大寺の大仏のように、寺院の本堂では仏像が堂々と祀られ、信徒と視線を交わす。
屋根の装飾にも注目したい。神社の社殿には「千木(ちぎ)」と呼ばれる交差した木や「鰹木(かつおぎ)」が乗り、古代建築の直線美を伝える。寺院の伽藍は中国や朝鮮半島から伝来した反りのある屋根や組物細工が特徴で、アジア大陸の建築意匠が色濃く残る。