「なぜ日本にはCIAのような統合型の対外諜報機関がないのか」という議論は、政界や安全保障の専門家の間で数十年間にわたり繰り返されてきました。
対外秘密工作を行う強力な統合機関を新設する「日本版CIA構想」は、過去に幾度も検討されてきました。しかし、以下の3つの高い壁に阻まれて実現には至っていません。
・法制度と権限の制約:憲法第9条の解釈や現行法下で、海外において身分を偽装した工作員にどのような法的保護や権限を与えるかという問題。
・省庁間の縦割り意識:警察庁、外務省、防衛省、公安調査庁がそれぞれ独自の情報ルートと組織益を抱えており、権限移譲に強い抵抗があること。
・国民的合意の形成:戦前の特高警察や軍部暴走の歴史的記憶から、秘密警察化への警戒感が根強く存在すること。
さらに深刻な議論となっているのが、スパイ防止法の不備です。現在の日本には、機密情報を外国政府に売り渡す行為全般を包括的に重罰に処する法律がありません。特定秘密保護法や経済安全保障推進法によるセキュリティ・クリアランス制度の導入など、法整備は着実に前進しているものの、一般人を巻き込んだ産業スパイ工作や影響力工作(認知戦)への対処には依然として法的な抜け穴が指摘されています。