皮膚に生じる赤い突起物は一見すると同じように映りますが、病態生理学的な観点から見ると「ニキビ」と「おでき」は完全に別の疾患です。適切な対処の第一歩として、まずは両者の根本的なメカニズムとおできとニキビの見分け方を正確に把握する必要があります。
一般にニキビと呼ばれるものは、医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と定義されます。過剰な皮脂分泌や角化異常によって毛穴の出口が塞がれ、皮脂が充満した毛穴内部でニキビの原因菌であるアクネ菌(Cutibacterium acnes)が異常増殖することで局所的な炎症が引き起こされます。初期段階では白ニキビ・黒ニキビと呼ばれるコメド(面皰)から始まり、炎症が進むと赤ニキビ、膿を持つ黄ニキビへと段階的に進行します。
一方、いわゆる「おでき」の正式な医学名は「癤(せつ)」です。皮膚の表面に常に存在する常在菌の一種であるおできの原因菌・黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などが、毛穴の奥深くにある毛包(もうほう)や皮下組織に入り込み、組織を破壊しながら急激に化膿する細菌感染症を指します。ニキビが「毛穴の詰まり」を主因とするのに対し、おできは「毛包深部への細菌の急性侵入と感染」が主因です。
両者を見分ける最大の判断軸は「痛みの質」と「しこりの感触」です。ニキビは触れた際に軽い圧痛を感じる程度であることが大半ですが、おできは毛包深部の神経を圧迫・刺激するため、何もしなくてもズキズキとした拍動性の激痛を伴います。また、指で触れた際に皮膚の奥深くに明らかな熱感と硬い塊を感じる場合は、ニキビではなくおでき(癤)を疑うのが医学的な定石です。