十二指腸は、胃から送られてきた強酸性の胃液混じりの食物を、胆汁や膵液によって中和しながら消化・吸収を進める重要な器官です。通常、十二指腸の粘膜は厚い粘液のバリアによって保護されていますが、胃酸の分泌過多や粘膜防御機能の低下が起こると、自らの胃酸によって粘膜が消化され、組織がえぐり取られて潰瘍を形成します。
十二指腸潰瘍の初期症状として最も顕著に現れるのが空腹時の痛みです。胃の中に食べ物がない状態では、分泌された強酸性の胃液が直接十二指腸の潰瘍面に流れ込み、むき出しになった神経を刺激します。食事を摂ると食べ物が胃酸を一時的に中和・吸収するため、食後しばらくは痛みがピタリと治まるのが大きな特徴です。特に胃酸分泌が高まる深夜から明け方にかけて、激痛で目が覚めるケースが多発します。
さらに炎症が十二指腸の後壁深くまで進行すると、後腹膜の神経を刺激し、みぞおちだけでなく背中の痛みとして放散痛が現れることがあります。「単なる筋肉痛や姿勢の悪さ」と見誤りがちですが、背部痛を伴う場合は潰瘍が深部に達している警告サインと捉えるべきです。