現在、東京の店舗を訪れた多くの人が直面するのが、「そもそも中に入れない」、そして「入れたとしても目当てのものが全くない」という二重の壁です。ネットの質問掲示板には連日のように「東京中を探し回っても全然見つからない。どこに行けば買えるのか」という切実な投稿が寄せられています。なぜこれほどまでに東京の直営店舗で品薄と入店待ちが激化しているのでしょうか。その背景には、単なるブームでは片付けられない3つの構造的要因があります。
第1の理由は、米ロサンゼルス・ハリウッド工房における生産キャパシティの絶対的制約です。多くのラグジュアリーメゾンが巨大コングロマリットの傘下に入り、工場での大量生産や機械化を進める中、クロムハーツは創業家であるリチャード・スタークとその一族による独立経営を貫いています。シルバーやレザーの加工は、熟練の職人による手作業の比率が極めて高く、どれほど世界的な需要が急増しようとも、安易に生産ラインを拡大してクオリティを妥協することを行いません。供給の上限が最初から固定されているのです。
第2の理由は、急激なインバウンド需要と世界的な価格差です。アジア圏を中心とする世界的なクロムハーツ人気は年々過熱しており、特に中国、韓国、台湾、東南アジアの富裕層や若年層にとって、東京の直営店を訪れることは一種のステータスとなっています。加えて、歴史的な為替の円安基調が長期化したことで、海外の定価や二次流通相場と比較して「日本の直営店で買うことが世界で最も割安」という現象が発生しました。このため、訪日旅行客によるまとめ買いが日常化し、東京の店頭に並んだシルバーが瞬く間に海外へと持ち出されていく構造が続いています。
第3の理由は、二次流通市場におけるプレミア化と転売業者の組織的介入です。定番リングやペンダントトップが定価を大幅に超える価格でフリマアプリや買取専門店で取引される事態が常態化した結果、直営店に毎日並んで在庫を買い占めようとする並び屋や転売ヤーの存在が問題視されるようになりました。こうした動きを阻止するため、東京の各直営店では「入店制限」と「購入点数制限」、さらには身分証明書の確認を伴う「整理券の配布」を余儀なくされ、結果として一般のファンが気軽に立ち寄って購入することが極めて困難な環境が作り出されています。