かつて街中や文学のなかに頻繁に見られた重篤な脊柱変形者が、現代社会において劇的に姿を消した背景には、医療技術と社会公衆衛生の飛躍的な向上が存在します。
1. 抗結核薬の登場と公衆衛生の確立
最大の要因は、1940年代以降に開発されたストレプトマイシンをはじめとする抗結核薬の普及です。結核の早期診断と化学療法が確立されたことで、菌が骨にまで達して椎体を破壊する前に完治させることが可能になりました。結核予防法に基づくBCG接種や定期健診の定着により、結核罹患率そのものが過去数十年で激減したことが、脊椎カリエスの撲滅に直結しています。
2. 栄養状態の向上と乳幼児ビタミンD管理
戦後の食生活改善により、極端な栄養失調によるくる病は著しく減少しました。現代では、粉ミルクの栄養成分規格化や離乳食の啓発、母子保健指導の充実により、重度の骨変形を伴うくる病は臨床現場で極めて稀な症例となっています。
3. 学校検診の制度化と低侵襲な脊椎外科手術の進化
学校保健安全法に基づく定期健診(モアレ検査や前屈テストによる側弯症検診)の義務化により、思春期の骨格異常を無症状の初期段階でスクリーニングできる体制が整いました。変形が軽度のうちに装具治療を行うほか、進行例に対しても金属製インプラントを用いた高度な脊柱変形矯正固定術が確立されたため、骨が破壊されたまま放置される事態そのものがなくなっています。