観客にとっては「少しの小雨」に見えても、主催者にとっては「即時中止」に値するケースがある。その最大の分岐点となるのが、花火大会雨天中止の決定理由における安全管理上の法的基準だ。
火薬類取締法および各都道府県の安全基準では、「地上風速が毎秒7メートル以上」または「落雷の恐れがある警報発令時」には火薬の装填および打ち上げ作業を即座に停止しなければならないと定められている。煙火店(花火師)の現場統括責任者は、取材に対して次のように胸の内を明かしている。
「お客様からは『傘を差せば見られるのに』と言われることもあります。しかし、筒に雨水が入ると火薬が不完全燃焼を起こし、地上すれすれの超低空で大玉が炸裂する『過炸裂(地表破裂)』という最悪の大事故を引き起こすリスクがあるのです。また、打ち上げ台は金属製の足場を組んでいるため、落雷があれば花火師自身の命に関わります」
こうした危険を回避するため、実行委員会は気象庁の高解像度降水ナウキャストや民間気象会社の雨雲レーダーと天候判断の経緯を突き合わせ、以下のタイムラインで非公開の検討会議を重ねている。
- 第1次判断(午前7:00〜8:00):煙火の運搬・筒への装填作業を開始できるかの判断。台風直撃や明らかな大雨の場合はここで中止決定。
- 第2次判断(正午12:00〜13:00):露店設営および交通規制員・警備員の配置判断。天候悪化の兆候がある場合、公式発表の中止順延ニュースとして第1報をリリース。
- 最終判断(午後15:00〜16:00):観客の移動開始直前における雨雲レーダーの実況解析。ここで「強行開催」「時間短縮」「中止」「予備日への順延」の最終決定が下される。
天候判断のプロセスを知れば、なぜ夕方に急遽中止が決まるのか、その切迫した理由が理解できるはずだ。