聾学校とは、聴覚に障害のある幼児・児童・生徒に対して、幼稚園から高校に相当する普通教育を行いながら、障害に起因する困難を克服・改善するための専門的知識・技能を授ける学校です。かつては盲学校や養護学校と並ぶ独立した校種でしたが、2007年(平成19年)の学校教育法改正により、制度上はすべて「特別支援学校」へと一本化されました。
これに伴い、公立学校の多くが「〇〇県立ろう学校」から「〇〇聴覚特別支援学校」などへと名称変更を行いました。この改称の背景には、障害種別ごとに縦割りだった教育から、個々の重複障害や発達ニーズに柔軟に対応する「インクルーシブ教育システム」へ移行するという政策意図がありました。しかし、現場や卒業生、ろう文化コミュニティの間では「聾(ろう)」という言葉が自らの言語的アイデンティティそのものであるという自負が根強く、現在でも東京都立中央聾学校のように伝統的な校名を残している学校が数多く存在します。
通常校や特別支援学級との決定的な違いは、「すべての学習・生活空間が視覚情報と聴覚補償に最適化されている点」にあります。地域の小学校にある通常学級では、授業中の先生の指示や友だちの雑談を聞き取ることに莫大なエネルギーを消費し、教室内で「情報難民」になりがちです。週に数時間だけ別室で指導を受ける「通級指導教室(難聴通級)」や、校内に設置された「難聴学級(固定制)」もありますが、一日の大半を過ごす集団生活の中では、どうしてもコミュニケーションの壁が生じるリスクが拭えません。
対して聾学校は、教員が聴覚障害教育の専門性を持ち、教室には吸音壁や補聴援助システム(ロジャーやFM補聴システム)、電子黒板やリアルタイム字幕システムが標準配備されています。何よりも、周囲にいるクラスメイト全員が「同じ聞こえにくさ」を共有しているため、会話の輪から取り残される精神的疎外感(いわゆるディナーテーブル症候群)に苦しむことなく、十全にコミュニケーションに没頭できる環境が整っています。