作業ミスを未然に防ぐためには、手元のナットがどのような構造になっているかを正しく判別する観察眼が欠かせません。形状ごとの特徴と取り付け時の向きを整理して把握しておく必要があります。
まず、貫通ナットと袋ナットの違いについてです。袋ナットは上部がドーム状に閉じられており、ハブボルトの先端を雨水や泥汚れによるサビから保護する構造を持っています。一方、貫通ナットは貫通孔が空いており、ボルトの突き出し量が長い場合やスチールホイール、ホイールキャップを装着する車両で多用されます。
貫通ナットの向きを見分けるポイントは至ってシンプルです。ナットの端面を観察した際、外周が削られてすり鉢状に角度がついている側(テーパー座面)を必ずホイール側(内側)に向けます。文字が刻印されている面や、完全に平らな角張った面は外側(作業者側)に向けるのが鉄則です。
さらに注意を払うべきは、自動車メーカーやホイールごとに異なる座面形状の規格です。日本の市販車には主に3種類の座面が存在します。
- 60度テーパー座:トヨタ・ホンダを除く大半の国産車(日産、スバル、マツダ、三菱、スズキ、ダイハツ)および市販の社外アルミホイールで標準採用される円錐状の座面。
- 球面座(R座):ホンダ純正ホイール専用。接触面が丸みを帯びた球面形状になっており、テーパーナットとは一切の互換性がありません。
- 平面座(ワッシャー付):トヨタ・レクサス・日産の一部純正ホイールに採用。専用のカラーワッシャーが回転しながら面全体で固定する構造。
特に危険なのが、スタッドレスタイヤ用の社外ホイールにホンダやトヨタの純正ナットをそのまま流用するケースです。座面の当たり面が全く合致しないため、適切なトルクをかけても確実に緩みが発生します。社外ホイールを使用する際は、必ず60度テーパー規格に適合したナットを別途用意しなければなりません。