電通に対する批判が決定的なものとなったのは、企業の倫理観を根本から疑わせる数々の重大不祥事が社会問題化したからです。報道各社の調査報道や捜査当局の捜査によって白日の下に晒された事件の数々は、単なる企業の一過性のミスでは済まされない深い爪痕を残しました。
社会に最も強烈なトラウマを刻んだのが、過労死問題です。1991年に入社2年目の若手社員が過労自殺に追い込まれた「電通事件」では、最高裁が企業の安全配慮義務違反を厳しく認める判決を下しました。それから24年が経過した2015年12月、新入社員だった高橋まつりさんが月100時間を超える過酷な時間外労働とパワハラに追い詰められ、命を絶つ痛ましい事件が再び発生します。SNSに残された「心も体もボロボロ」「眠りたい以外の感情を失った」という悲痛な叫びは日本中に拡散し、同社が過去の反省を生かすことなく、人命を軽視する労働環境を温存していた事実が厳しい糾弾を浴びました。
さらに、社会的な信用を失墜させたのが東京五輪・パラリンピックを巡る汚職・談合事件です。東京地検特捜部による捜査の過程で、大会組織委員会の元理事に対する受託収賄疑惑や、テスト大会および本大会の運営業務を巡る大規模な談合が次々と明るみに出ました。国民の莫大な税金が投じられた国家プロジェクトの裏側で、電通幹部らが競合他社と受注調整を行い、利権を私物化していた構図が露呈。独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で法人としての電通グループおよび幹部が起訴され、中央省庁や自治体から相次いで指名停止処分を受ける事態へと発展しました。
これらに加え、過去にはネット広告の掲載期間や掲載実績を偽って顧客に過大請求を行っていた「デジタル広告不正請求問題」や、経済産業省の「持続化給付金事業」における不透明な再委託構造(サービスデザイン推進協議会を巡る疑惑)など、利益至上主義とモラルハザードを疑わせる事件が立て続けに表面化しました。これらの不祥事の積み重ねが、「利益のためなら手段を選ばない」という世間のネガティブな企業イメージを決定づけています。