薬膳料理と聞くと、「朝鮮人参やクコの実といった特殊な漢方生薬を取り寄せなければ作れない」と尻込みしてしまう人が少なくありません。しかし、医食同源の真髄は近所のスーパーマーケットで手に入るありふれた食材の中にこそあります。健康長寿ネットやクラシエの漢方研究チームが提案しているように、食材の持つ性質を組み合わせるだけで、台所は立派な調剤室に変わります。
特に季節の変わり目や、デスクワークによる冷えとむくみに悩む現代人におすすめしたいのが、「冬瓜と鶏肉の煮物」です。
冬瓜は「冬」という漢字がつきますが夏から秋にかけて旬を迎える野菜で、漢方の生薬としても「冬瓜皮(とうがんぴ)」として利水・利尿作用に用いられます。体内に滞った余分な水分を外へ逃がし、熱を冷ます「寒性」の性質を持っています。一方で、冷えやすい人が冬瓜単体を過剰に摂取すると、身体を冷やしすぎて胃腸を痛めてしまう懸念があります。
そこで組み合わせるのが「鶏肉」です。鶏肉は東洋医学において気力を補い、胃腸を温めて血行を促す「温性」の代表格です。さらに加熱調理の際に生姜(温性で発散作用を持つ)や薄口醤油を加えて出汁で優しく煮込むことで、冬瓜の「余分な水分を排出する力」を活かしつつ、鶏肉と生姜の「身体を温める力」で冷えを防ぐという絶妙な配合が完成します。スーパーの精肉売り場と野菜売り場を回るだけで、身体の不調に応じた本格的な医食同源メニューが手軽に仕立てられるのです。