オールドレンズの代名詞「Super Takumar 55mm F1.8」は一体なぜ今も人気なのか。その核心は、現代レンズが「光学的な欠陥」として徹底的に排除した内面反射や収差を、唯一無二のエモーショナルな表現力へと昇華させている点にあります。
とりわけSNSやポートレート撮影の現場で絶賛されているのが、強い逆光下で現れる円環状の光輪、通称「虹色フレア(サークルゴースト)」です。この幻想的な現象は、当時の単層コーティング(モノコーティング)技術の限界と、貼り合わせ面の曲率設計が生み出す物理現象です。現代のマルチコーティングレンズが逆光でも破綻のないクリアな描写を維持するのに対し、スーパータクマーは強い光源を捉えた瞬間に画面全体を淡い光のベールで包み込み、同心円状の虹を浮かび上がらせます。
実際の撮影現場において、狙い通りに鮮烈な虹色ゴーストを捉える「虹色フレアの出し方」には明確なセオリーが存在します。夕方や早朝などの低い太陽光、あるいは夜間の点光源を画面の対角線上、フレームの隅ギリギリに配置し、絞りを開放F1.8からF2.0付近に設定することです。わずか数ミリのアングル変化で光の環がダイナミックに形を変える挙動は、ファインダー越しに撮影者の創作意欲を強く刺激します。
さらに、単なる「トイレンズ的な甘さ」に留まらない点も高評価の要因です。各種のスーパータクマー55mmF1.8作例を検証すると、画面中心部においては絞り開放から芯のあるシャープネスを誇り、F4からF5.6まで絞り込めば現行レンズに匹敵する解像力を発揮します。この「破綻と緻密さの二面性」こそが、多くの表現者を虜にしてやまない理由です。