「食へんの漢字」と聞いて、まず頭に浮かぶのはどのような文字でしょうか。「飯(めし・ハン)」「飲(のむ・イン)」「飼(かう・シ)」「飽(あきる・ホウ)」など、義務教育の初期で習う身近な漢字は誰もがスムーズに読めるはずです。しかし、少し視野を広げてみると、読めそうで読めない絶妙な難読漢字が次々と現れます。
例えば、和菓子や伝統料理の献立表で見かける「飴(あめ)」「餡(あん)」「餅(もち)」は食文化に直結しているため比較的推測しやすい部類です。しかし、「飩(うどん・ドン)」「饅(まんじゅう・マン)」「饂(うどん・オン)」となると、手書きどころか読みでさえ一瞬迷う人が急増します。さらに、旅立ちの宴を意味する「餞(はなむけ・セン)」や、飢饉を象徴する「飢(うえる・キ)」「饉(うえる・キン)」など、食の有無が生死や人間関係の機微に直結していた時代の記憶を留める文字も少なくありません。
大手予備校の国語科講師が教育情報誌の取材で明かした証言によると、「近年の難読漢字ブームによって難読字の視覚的な認知度は上がっているものの、部首がなぜ『食』なのかという根本的な意味構造まで理解して覚えている生徒は全体の2割にも満たない」といいます。単なる文字の羅列として暗記するのではなく、その文字が背負っている背景知識とともに向き合うことが、忘れられない知識へと昇華させる鍵となります。