確かな理論的裏付けがある一方で、家庭菜園のコミュニティやSNS上では「米ぬかをすき込んだら異臭がして苗が黄色く変色し、枯れてしまった」「土を掘り返すとドブのような臭いがする」といった失敗談が溢れています。農林水産関連の技術指導員は、取材に対して次のように現場の落とし穴を語ります。
「米ぬかは極めて分解スピードが速い有機物です。土中に投入されると、微生物が急激に酸素を消費しながら分解を進めます。このとき土壌の通気性が悪いと、酸素欠乏下で嫌気性発酵が進み、高濃度の有機酸(酪酸や酢酸)や硫化水素、メタンガスが発生します。これが典型的なガス湧き失敗原因です。この状態の土にデリケートな作物の根が触れれば、ひとたまりもなく酸欠と毒性ガスで壊死してしまいます」
成否を分ける決定的な要素は、米ぬかすき込み時期の厳守に他なりません。苗を植え付ける直前のすき込みは自殺行為です。春作に向けて土作りを行う場合、最低でも定植の3週間から1ヶ月前、地温が低い冬期であれば2ヶ月前には土に混和させ、発酵・分解プロセスを完全に完了させておく必要があります。
土壌中で米ぬかが白い菌糸(カビ状の放線菌や酵母菌)に覆われ、発熱のピークが過ぎて土の温度が常温に戻り、森の腐葉土のような甘く香ばしい匂いに変わった段階で、初めて安全な植え付け環境が整います。土壌の変化を見極めずにカレンダーの日程だけで植え付けを急ぐ姿勢こそが、最大の敗因となっています。