言葉の成り立ちから整理すると、傷病名とは「傷(負傷・ケガ)」と「病(疾病・病気)」を合わせた総称です。医療法や健康保険法、労働基準法などの行政枠組みにおいて、個人の健康被害全般を法的に一括管理するために定義されています。
日常会話や医学的な純粋診断で用いられる「病名」は、ウイルス感染や生活習慣病といった内因性の疾患そのものを指す傾向があります。これに対し、骨折や火傷、腱鞘炎などの外因性によるケガは本来「病気」ではありません。しかし、治療や休業補償の対象とするためには、これらを等しく扱う制度上の包括概念が必要となります。その役割を担っているのが「傷病名」という公的分類です。
公的医療保険のレセプト(診療報酬明細書)審査では、厚生労働省が管理する標準傷病名マスター(ICD-10対応の傷病名コード)が使用されます。医師がカルテに入力した傷病名は約2万件以上におよぶ固有コードへ電子的に変換され、実施された検査や処方薬の医学的妥当性が突合審査されます。確定申告の医療費控除においても、提出明細書に治療目的を特定する傷病名の記入が求められるなど、個人の医療費支出が正当な控除対象であるかを国が判別する基準として機能しています。