「最近急に涙もろくなったと感じていませんか?」と問いかけると、多くの人が「歳のせい」あるいは「自分の心が弱くなったから」と内省しがちです。しかし、感情の表出は個人の根性や性格だけでコントロールできるものではありません。取材に応じた心療内科医は、急に涙もろくなった原因の多くが「感情のキャパシティオーバー(情動の溢流)」にあると指摘します。
人間の脳内では、神経伝達物質であるセロトニンが感情コントロールのブレーキ役を担っています。外部からの過度なプレッシャーや長時間労働、対人関係の緊張が常態化すると、脳内のセロトニン分泌量は急激に減少します。その結果、扁桃体が司る情動の揺れを抑えきれなくなり、普段なら受け流せるような些細な言葉や情景に対しても、急に泣けてくるストレス反応として現れるのです。
また、涙もろくなった自律神経失調症の臨床現場でも同様の傾向が確認されています。交感神経が極度に張り詰めた状態が続いた後、ふとした瞬間に副交感神経へ急激に切り替わろうとする際、自律神経の急激な揺らぎが涙腺を刺激します。本人の意思とは無関係に溢れ出る涙は、張り詰めた神経系が「これ以上は耐えられない」と訴える生体防御の警告灯にほかなりません。