「年齢のせいだから仕方がない」と諦めていた人が、西洋薬の抗コリン薬(膀胱の収縮を抑える薬)を処方されたものの、口の渇きや便秘といった副作用に耐えかねて漢方薬へシフトするケースが後を絶ちません。なぜ、泌尿器のトラブルに東洋医学の処方が選ばれるのでしょうか。
西洋医学において夜間の排尿トラブルは、膀胱が過敏になって尿を溜められない「蓄尿障害(過活動膀胱など)」や「前立腺肥大症」として捉えられます。対して漢方医学では、加齢に伴い生命エネルギーや水分代謝を司る臓腑が衰退する「腎虚(じんきょ)」という概念を中心に分析します。腎の気が不足すると、下半身が冷え、体内の水分を適切に循環・温留する力が落ち、結果として就寝中に冷えた膀胱が尿を保持できなくなります。
さらに見過ごせないのが、夜間多尿と夜間頻尿の決定的な違いです。就寝中の尿量が1日の総尿量の33%以上(高齢者の場合)を占める状態は「夜間多尿」と呼ばれ、膀胱の大きさではなく、心不全、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、あるいは夕方以降の下肢のむくみが横になることで血流に戻り、尿として排出される病態が関係しています。漢方薬は、単に膀胱の神経をブロックするのではなく、体全体の血流(瘀血の改善)や水分バランス(水毒の排出)、体を深部から温めることで、「冷えからくる過敏性」と「軽度の水分代謝異常」の双方に包括的なアプローチができるため、多くの悩める中高年に支持されているのです。