甲虫やナナフシのような無骨な造形美とは対照的に、息を呑むような優美さで「最大」の名を冠するのが、パプアニューギニアの東部オロ州の極めて限られた低地熱帯雨林にのみ生息するアレクサンドラトリバネアゲハです。
メスの開張は最大30cm前後に達し、その大きさは成人の両手を広げたサイズに匹敵します。オスはメスよりも一回り小さいものの、ビロードのような漆黒の翅に鮮烈なエメラルドグリーンとゴールドの幾何学模様が浮かび上がる、息を呑む美しさを誇ります。高木が連なるジャングルの最上層(樹冠)を滑空するため、1906年に探検家アルバート・ミークが初めて本種を採取した際は、散弾銃で撃ち落として標本を確保したという有名な逸話が残されています。
現在、アレクサンドラトリバネアゲハは生息地のパーム油農園開発や森林伐採、さらには違法な標本密売によって絶滅の危機に瀕しており、ワシントン条約(CITES)の「附属書I」に指定され、国際的な商業取引が厳格に禁止されています。その存在は、圧倒的な美と巨大さが自然環境の微妙な均衡の上にしか成り立たないことを物語っています。
【プロの結論】巨大昆虫の観察・飼育に挑むべき人と慎重になるべき人の判断基準
近年、外国産甲虫の輸入解禁やブリード技術の進化に伴い、ヘラクレスオオカブトやヨロイモグラゴキブリなどは国内でも入手・飼育が可能な環境が整いました。しかし、その圧倒的なスケールと寿命の長さゆえに、安易な飼育は厳禁です。