山野で実をつける野草や樹木の中には危険な毒木も存在しますが、キハダの実に人体へ害を及ぼす毒性はありません。昔から日本各地や北方地域で食用・薬用として親しまれてきた安全な天然果実です。毒性があると誤解されがちな背景には、口に含んだ瞬間に走る強烈な苦味と舌を刺激する独特のピリピリ感があります。
キハダはサンショウやミカンと同じミカン科に属しています。そのため、果皮を指で潰すとレモンやベルガモットを思わせる清涼感あふれる柑橘の香りが立ち上ります。しかし、実際のキハダの実の味は甘みのあるフルーツとは正反対です。柑橘の爽やかさの奥から、グレープフルーツの皮を何倍も濃縮したようなビターな苦味と、山椒に似た奥深い辛み・痺れが追いかけてきます。
この強烈な個性ゆえに、生でそのまま大量に食べる果物には向いていません。適度な下処理や乾燥、アルコール抽出などの工夫を施すことで、苦味を「旨味とアクセント」へと昇華させることが美味しく食べるための秘訣です。