タイ古式マッサージの正式名称である「ヌアット・タイ」は、2019年にユネスコ無形文化遺産へと登録された。約2500年の歴史を持つこの伝統医学は、単に筋肉を揉みほぐす対症療法ではない。「セン」と呼ばれる体内のエネルギーライン(伝統中国医学における経絡に類似する概念)を優しく刺激し、滞った生命エネルギーの流れを促すホリスティックな体系だ。
セラピストは手のひらや指先だけでなく、肘、膝、足裏までを巧みに駆使する。「二人で行うヨガ」と称されるダイナミックなストレッチによって、関節の可動域がじんわりと広がり、深層筋の緊張が解けていく。呼吸のリズムに合わせたゆったりとした施術は、副交感神経を優位にし、半覚半睡の深いリラクゼーション状態へと誘ってくれる。