画面中央の水槽でゆらゆらと揺れながら、小石をまとって語りかけるトビー。初見の視聴者が抱く最大の疑問が「この生き物の正体は何か」という点です。
Eテレ2355におけるトビーの正体は、水生昆虫である「トビケラ(飛螻蛄)」の幼虫です。トビケラの幼虫は、自ら分泌する糸を使って川底の砂や小石、落ち葉などを巧みに円筒状に固め、携帯用の「巣(筒巣)」を作って生活する習性を持っています。あのゴツゴツとした愛らしいビジュアルは、CGではなく本物のトビケラの生態に基づいた緻密な実写映像です。
そして、トビーの魅力を決定づけているのがその「声」です。2355のトビー役声優を務めるのは、子役出身の内野真生(うちの まお)さん。過度な感情表現を排した、どこか平熱感のある少年ボイスが、往年の名画に対するトビーの大人びたコメントと絶妙なギャップを生み出しています。
トビーが口にするセリフには、往年の映画評論家・淀川長治氏への敬意を感じさせるオマージュと、思わずクスリと笑わせる人間味あふれる名言が散りばめられています。
「この曲を聴くとさ、なんでも許せちゃうような気がするんだよね」「映画って、やっぱり暗いところで観るのがいいよね」「明日は金曜日か……もうひと踏ん張りだな」。深夜の張り詰めた気分をふっと緩めるこれらの言葉こそ、視聴者がトビーに惹きつけられる真の理由です。