国分寺駅の改札を出て南口ロータリーの東側へ進むと、鬱蒼とした木立に囲まれた重厚な門構えが現れます。駅前一等地という立地でありながら、一歩足を踏み入れれば電車の走行音や街のざわめきが驚くほど遠のき、野鳥のさえずりと風の音に包まれます。
殿ヶ谷戸庭園の敷地は、武蔵野台地を多摩川が削り取って形成された「国分寺崖線(通称:はけ)」の南側斜面に位置しています。約1万4000平方メートルに及ぶ園内には、台地上部の開放的な芝生広場から、斜面の樹林地、そして崖下の池や湧水群へと続くダイナミックな高低差(約12メートル)が存在します。自然の地形をそのまま活かした立体的な庭園構成こそが、訪れる者を飽きさせない最大の要因です。
園内は回遊式林泉庭園として整備されており、人工的な装飾を極力抑え、武蔵野の雑木林や自噴する湧水を主役に据えています。この「自然の起伏と景観の調和」は、造園学の観点からも高く評価され、2011年(平成23年)に国の名勝として指定されました。駅前という利便性に甘んじることなく、本物の静寂と日本の原風景を維持し続けている点に、この庭園の真の価値があります。