本作の持つ重厚なダークファンタジーの質感は、古典的な文学作品や世界各国の神話的モチーフを巧みに昇華した結果といえます。手がかりとなる『ネクロの花嫁』の元ネタを探ると、複数の歴史的名作との親和性が確認できます。
代表的なモチーフとして挙げられるのが、ギリシャ神話における「オルフェウスとエウリュディケ」の悲劇です。毒蛇に噛まれて命を落とした妻を取り戻すため冥界へと降り立つオルフェウスの物語は、「振り返ってはならない」という禁忌を破ったことで永遠の別れを迎えます。『ネクロの花嫁』においても、神の領域である生死の理を犯した者が背負う過酷な代償というテーマが色濃く反映されています。
さらに、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』や、エドガー・アラン・ポーが描く死せる美女への偏執的な愛(『アナベル・リー』『リジイア』など)、そして19世紀末のデカダンス文学に見られる「死体愛好(ネクロフィリア)」的な耽美主義の文脈が巧みにサンプリングされています。手腕の確かなボカロPの手によって、これら重厚な古典ゴシックのエッセンスが、現代のアップテンポなビートとデジタルサウンドに再構築されている点が、幅広い世代を惹きつける最大の要因です。