「沖縄の離島に来たのかと錯覚した」――現地を訪れた旅行者がSNSや口コミで異口同音に口にするのが、笹川流れ(村上市)に代表される海岸線の圧倒的な透明感だ。「新潟の海はなぜこれほど透明度が高いのか?」という疑問を解き明かす鍵は、特異な地質構造と潮流のメカニズムにある。
県北部に位置する笹川流れ周辺は、太古の地殻変動と激しい波の浸食によって形成された花崗岩質の奇岩地帯である。花崗岩は風化すると比重の重い石英質の粗い白砂を生み出す。この砂は波に揉まれても舞い上がりにくく、泥分をほとんど含まないため、海水が濁る物理的要因がきわめて少ない。さらに、初夏からは対馬暖流が沖合を北上し、外洋の清澄な海水が絶えず岩礁の間へと供給される。信濃川や阿賀野川といった大河川の河口から地理的に距離を置いている点も、土砂や富栄養化の流入を防ぐ決定打となっている。
公式発表資料である環境省の海水浴場水質調査においても、新潟県内の主要水域は化学的酸素要求量(COD)が1リットルあたり1mg未満、ふん便性大腸菌群数も「不検出」または極めて微量にとどまる最高水準「水質AA」を毎年のように獲得している。「新潟の海綺麗ランキング」で上位常連の笹川流れでは、波が穏やかな晴天時には透視度15〜20メートル以上を記録し、水深数メートルの海底で揺らめく海藻や小魚の影が肉眼でくっきりと捉えられるほどだ。冬の荒々しい波浪が創り出した岩礁美と、夏の静穏な外洋水が融合することで、奇跡的なまでの青と緑のグラデーションが生まれている。