「昨晩、糖質を抑えるために生ハムとお茶だけで済ませたのに、朝測ったら体重が1.5kgも増えていた」——知恵袋や体型管理コミュニティで頻出するこの現象には、人体の生理学的なメカニズムが関係しています。一晩で1.5kgもの体脂肪が合成されることは物理的にあり得ません。1kgの体脂肪を増やすには約7,200kcalのオーバーカロリーが必要だからです。
短期間で針を押し上げた真犯人は、脂肪ではなく「生ハムの塩分によるむくみ」です。生ハム100g中には約5.6gという強烈な量の食塩相当量が含まれています。厚生労働省が定める成人の1日あたりの目標塩分摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満。生ハムを中型パック1つ(70g程度)食べるだけで、1日の大半の塩分枠を使い果たしてしまいます。
人間の身体は、体内の塩分濃度を常に約0.9%の一定水準に保つ恒常性(ホメオスタシス)を備えています。高濃度の塩分が一気に血中に流れ込むと、濃度を薄めようとして脳が強烈な渇きを指示し、細胞間質液に水分を限界まで溜め込みます。塩分1gに対して水分は約100〜200ml保持されるため、5gの余剰塩分を摂取すれば、それだけで体内に500ml〜1L(重さにして0.5〜1.0kg)の水分が滞留します。これが、翌朝の顔の腫れぼったさや急激な体重増加の真実です。
さらに問題なのは、過剰な塩分が交感神経を刺激し、インスリンの感受性を低下させたり、強い喉の渇きをアルコールや糖質飲料で潤そうとする二次的な過食行動を引き起こす点です。「塩分の罠」を理解しない限り、いくら糖質を断ってもダイエットは失敗へと傾きます。