全国的な知名度を獲得した「どげんかせんといかん」ですが、宮崎弁としての文法構造や日常会話での使われ方には、地元民ならではの細やかな語感があります。宮崎県および南九州の方言体系において、この言葉は以下のように分解されます。
- 「どげん」:標準語の「どう」「どのように」に該当(類語:佐賀や福岡の「どぎゃん」、鹿児島弁の「ないごて」など九州一円に近縁の表現あり)。
- 「かせん」:動詞「する」の使役・意志を伴う変化、または「〜かする(何とかする)」の転訛。「どうにかしない」のニュアンス。
- 「といかん」:「〜と(しては)いかん(いけない/だめだ)」という義務・必然を示す否定形。
すなわち、標準語に直訳すると「どうにかしなければいけない」「なんとかしなければならない」という、強い危機感と切迫感を孕んだ表現になります。宮崎県内では決して特別な政治スローガンではなく、例えば「作物の病気が広がってきたから、どげんかせんといかん」「仕事の段取りが狂った、どげんかせんといかん」といったように、窮地に追い込まれた際の問題意識を共有する日常語として使われていました。
地元の方言研究者や住民の証言によれば、本来の宮崎弁は語尾が伸びる穏やかな口調(いわゆる日向時間・日向言葉)が多く、喧嘩腰の強い口調は好まれません。しかし東国原氏が発した「どげんかせんといかん」は、怒気や対立ではなく「県民全員でスクラムを組んで立て直そう」という呼びかけとして響いたため、角が立たずポジティブなエネルギーとして受け入れられた点が言語学的にもユニークな点です。