長渕剛と冨永愛の師弟関係を象徴する最大の出来事が、2014年秋に上演された冨永愛の独り芝居『愛寿蓮(あじゅれん)』です。冨永愛の自叙伝『Ai 愛なんて 大っ嫌い』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の出版を記念して企画されたこの舞台において、長渕剛は脚本・演出・総合プロデュースを一手に引き受けました。
舞台の準備期間中、長渕剛が冨永愛に課したのは妥協なき肉体改造と精神修行でした。長渕自身が実践する極限のウェイトトレーニングや体幹強化メニューを冨永に課し、舞台上で声を張り上げ、全身で感情を爆発させるためのフィジカルを徹底的に作り上げました。
稽古場では怒号が飛び交うほどの厳しい指導が行われ、冨永愛は涙を流しながらも食らいついたといいます。華やかなランウェイを歩くトップモデルの殻を破り、生身の人間としての叫びを舞台上で表現させる——長渕剛の指導は、冨永愛という一人の表現者を再誕させるための荒療治でした。