「農薬を使いたくない」という動機から、SNSや一部のDIY情報サイトで推奨されている「塩や重曹、熱湯を撒く」という民間療法には、住宅環境や土壌生態系を不可逆的に破壊する深刻なリスクが存在します。
最たる危険例が塩(塩化ナトリウム)の散布です。塩を土壌に撒くと浸透圧によって植物の水分を奪い枯死させることができますが、塩分は土壌中で微生物によって分解されず、半永久的に残留します。その結果、将来にわたって花木や芝生を一切植えられない不毛の土地と化すだけでなく、土壌中の塩分が雨水で流出し、建物の基礎コンクリートの劣化や地中に埋設された配管の腐食、隣家の庭木を枯死させるという深刻な越境被害を引き起こします。
また、熱湯の散布は地表近くの葉を熱変性させる一時的な効果にとどまり、数センチ地下にある根や種子には地温が伝わらず効果がありません。1平方メートルあたり数十リットルもの沸騰水を安全に運搬・散布する労力と火傷の危険性を考慮すれば、極めて非効率な手法です。環境への配慮を最優先する場合は、安易な家庭調合に頼るのではなく、食品原料由来(ペラルゴン酸など)の安全基準を満たした生分解性除草剤を選択するのが合理的です。