リトグリの脱退問題を語る上で、一般層にあまり知られていない最大の盲点が、「若年層ボーカリストに対する過酷な稼働負荷」と「感覚器官の酷使」という物理的環境です。
メジャーデビュー以降、リトグリは年間数十本に及ぶホール・アリーナツアー、CMタイアップ曲のレコーディング、テレビ特番の生放送、フェス出演などを休みなくこなしていました。激しいダンスを踊りながら、ピッチ(音程)を一切狂わせずに6声の緻密な和音を響かせる作業は、一般のポップス歌手とは比較にならない脳内処理と喉・耳の酷使を要求します。
特にmanakaが患った突発性難聴は、早期の完全休養とストレス遮断が絶対条件とされる疾患です。モニタースピーカーやイヤモニから爆音を浴び続ける過密なライブツアーの現場は、回復を目指す耳にとってあまりに過酷な環境でした。
さらに芹奈が公表した双極性障害は、感情の起伏やエネルギーレベルの変動が激しく、一定のパフォーマンスを年中求められる芸能活動との両立が極めて困難な疾患です。半年間の休養を経て2021年に復帰したものの、全国ツアーという極度の緊張状態に身を置き続けたことで、再び心身が限界を迎えてしまったのは想像に難くありません。
「いつ復帰できるか分からないメンバーを待つグループの重圧」と、「グループに迷惑をかけ続けていると自分を責めてしまう休養中の本人の苦しみ」。この二重の苦悩を断ち切るために下された決断が、2022年夏の「脱退・卒業」という選択でした。それは決して無責任な投げ出しではなく、互いの未来をこれ以上壊さないための、痛烈な防衛策だったのです。