毎月のように全国各地で催される公演。歌舞伎役者の1年は千秋楽が終われば翌月の初日が始まるという、休みのないサイクルで回っている。そして、その過酷なスケジュールの裏で奔走しているのが妻たちだ。
開演前の劇場ロビーに立ち、訪れる贔屓筋の一人ひとりに深々とお辞儀をして迎え入れる。誰がどの席に座り、最近どのような健康状態や家族状況にあるかまで頭に叩き込んでおく必要がある。ただ頭を下げるだけではない。会話の間合い、着物の着こなし、差し出すお礼状の筆致に至るまで、すべてが「家の格式」として評価されるのだ。
終演後も休む暇はない。楽屋での挨拶対応、楽屋見舞いの整理、チケットの手配、そして自宅に戻ってからの家事と育児。体力的な負担はもちろんのこと、一瞬の隙も許されない精神的緊張感が年中無休で続く生活が、彼女たちの日常である。