扁桃腺摘出手術(口蓋扁桃摘出術)を受けると声質が変わるという話は、単なる都市伝説ではありません。実際に手術を受けた患者の多くが「声の通りが良くなった」「声が高くなったように感じる」と証言しています。しかし、その変化の理由は「声帯そのものが変化したから」ではありません。
人間の声は、喉頭にある「声帯」が振動して原音(ブザーのような原初的な音)を作り、それが喉の奥から口、鼻へと抜ける空間(共鳴腔)で反響することで、一人ひとり異なる声質として完成します。口蓋扁桃を摘出すると、喉の奥を大きく塞いでいた肉の塊がなくなるため、口と喉の空間構造が劇的に拡張されます。
特に扁桃腺手術で声が高くなる理由として挙げられるのは、喉の奥の空間が広がることで高音域の倍音成分がクリアに響くようになり、これまで扁桃腺の腫れによってこもっていた低音寄りの響き(いわゆる「こもり声」)が解消されるためです。耳鼻咽喉科の音響分析データでも、手術前後で声帯の基本周波数(ピッチ)そのものはほとんど変わらないものの、フォルマントと呼ばれる共鳴特性が変化し、抜けの良い明るい音色にシフトすることが確認されています。