観光に訪れた人の多くが驚愕するのが、徒歩わずか数分の距離に位置する「白糸の滝」と「音止めの滝」が、まったく異なる景観と性質を持っている点です。国の名勝・天然記念物、さらには世界文化遺産「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産としても登録されている両者ですが、その成り立ちは対照的です。
決定的な違いは「水源」と「地質的構造」にあります。白糸の滝は、富士山の雪解け水が数十年かけて地中を通り、水を通さない古富士泥流層の上に溜まった地下水が、新富士火山の溶岩の裂け目から無数に湧き出している「湧水瀑」です。一方の音止めの滝は、富士山西麓を流れる一級河川「芝川」の本流そのものが溶岩の断崖をダイレクトに垂直落下する「河川瀑」です。
このように、至近距離にありながら地質学的アプローチが全く異なる二つの滝が一堂に会している地形は、世界的にも極めて稀有な景観です。白糸の滝の静寂と清涼感に浸った後に音止めの滝の怒涛の瀑音を体感すると、自然のエネルギーの多様性をまざまざと実感させられます。