「先祖代々の墓石に菊の紋が入っている」「骨董市で菊花紋入りの漆器を買った」という一般市民の事例は全国に数多く存在します。知恵袋や法務相談の現場に寄せられる実例を検証すると、私的領域における使用について警察が摘発に乗り出すといった事態は確認されていません。
歴史社会学的な見地から検証すると、鎌倉時代に後鳥羽上皇が菊紋を愛用して皇室の私的紋章となって以降も、皇族から功績のあった武士(足利氏や楠木正成、豊臣秀吉など)へ菊紋が下賜された史実があります。そのため、西日本や東北の旧家を中心に、「十善菊」「裏菊」「乱れ菊」といった変形菊紋が正式な家紋として現代まで継承されている事例は珍しくありません。
私的な範囲で着物の家紋として着用する、先祖伝来の墓石に彫刻する、あるいは自室に工芸品を飾るといった行為は、誰かの権利を侵害するものでも詐欺行為に当たるものでもないため、完全に合法的な私的自治の範囲内にとどまります。日常の生活空間において愛好することに対して、過度な法的恐怖を抱く必要はありません。