なぜ『りんごかもしれない』に大人も唸る?対象年齢と人気の真相を解剖

なぜ『りんごかもしれない』に大人も唸る?対象年齢と人気の真相を解剖

なぜ『りんごかもしれない』に大人も唸る?対象年齢と人気の真相を解剖とは一体何なのか? 詳しい意味を簡潔に解説します。

日常の見慣れた光景をほんの少しズラすだけで、退屈な世界が突如としてワンダーランドに変貌する。『りんごかもしれない』の物語は、学校から帰ってきた男の子が、テーブルの上に置かれたりんごを発見する場面から始まります。この絵本の特筆すべきあらすじは、ドラマチックな事件が起きるわけではなく、少年の頭の中で展開される「思考のプロセスそのもの」が冒険になっている点です。

「おおきなサクランボのいちぶかもしれない」「じつはなにかのタマゴかもしれない」「そだてると大きな家になるのかもしれない」――。男の子の想像は、外見の類似から構造の推測、さらにはりんご自身の感情や宇宙的スケールのSF的妄想へと、縦横無尽に枝分かれしていきます。筑波大学大学院で総合造形を学んだヨシタケシンスケ氏ならではの、緻密かつユーモラスなイラストとコマ割りは、読者の知的好奇心を一気にドライブさせます。

大人が思わず唸らされる最大の要因は、この作品が西洋哲学における「デカルト的懐疑(当たり前を疑う精神)」や、ひとつの事象を多面的な視点から捉え直す「認知の脱中心化」を、極めて軽やかに実践しているからです。「見えているものが世界のすべてではない」というメッセージは、凝り固まった固定観念に縛られがちな現代の大人の脳を心地よく解きほぐします。定価1,650円(税込)の一冊に詰まった思考の深さは、絵本というメディアの枠組みを鮮やかに拡張しました。

加藤 愛美
著者

加藤 愛美

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。