ネット上では「角田美代子は稀代のモンスターであり、最初から殺人を目的に家族を襲った」という過度な単純化が見受けられます。しかし、警察の供述調書や社会心理学的見地から浮かび上がる実態は異なります。
第一の盲点は、彼女の目的があくまで「金銭の収奪と自己の安楽な生活基盤の維持」にあったという点です。暴行による死亡は、極限まで搾取し恐怖でコントロールする過程で生じた「結果」であり、死者が出た際には死体遺棄工作に奔走するなど、保身に汲々としていた事実が記録されています。
第二の誤解は、「被害者たちがなぜ警察に駆け込まなかったのか」という自己責任論的な見方です。当時の被害者らは親族を人質に取られ、互いに暴力の加害者に仕立て上げられていたため、「警察に行けば親族が殺される」「自らも逮捕される」という二重三重の恐怖に縛られていました。外部との連絡を完全に断たれた閉鎖環境における心理的麻痺は、常人の想像を遥かに超えるものでした。