「なぜ最初から分かりやすく100cmと書いてくれないのか」と感じる方も少なくないでしょう。しかし、建築図面や工業製品の設計において、図面寸法ミリ表記は揺るぎない絶対的ルールとして定着しています。
日本産業規格(JIS Z 8310 製図総則)の規定では、機械や建築の図面における寸法数値は「原則としてミリメートル(mm)を単位とし、単位記号は付さない」と定められています。つまり、図面に「1000」とだけ書かれていれば、それは無条件で「1000ミリ(=100センチ)」を意味します。
取材に応じてくれた一級建築士の証言によると、この慣行には「人為的ミスの根絶」という切実な理由があります。
「もし図面に『10.5cm』のようにセンチメートルを使って小数点を打つ運用にすると、印刷のかすれや現場の粉塵、手書き修正の跡によって『105cm』や『105mm』と誤認されるリスクが跳ね上がります。建築や木工の現場において、1ミリの誤差は建具の建て付け不良や構造的な隙間を招く致命傷です。数値をすべて整数(ミリ単位)で統一することは、現場職人の誤読を防ぐための極めて合理的な安全装置なのです。」
ECサイトで展開される家具サイズミリ表記も、この設計図面の文化をそのまま引き継いでいます。メーカー側としては、1ミリ単位で正確な寸法を開示することが製造物責任上のトラブル回避につながるため、センチではなくミリ表記を基本としているのが実情です。