CVTフルード(Continuously Variable Transmission Fluid)とは、金属ベルトと可変プーリーによってギア比を無段階に変化させるトランスミッション専用に開発された潤滑・作動油です。金属同士を強く接触させて駆動力を伝えるCVT機構において、油圧によってプーリーの幅を精密に制御する「油圧作動油」としての役割と、金属ベルトとプーリーの接触面を保護しつつ滑らせない「トラクション特性」という相反する二大機能を同時に果たしています。
現場で最も恐れられている初歩的トラブルが、従来のステップ式オートマチックトランスミッション車に用いられる「ATF(オートマチック・トランスミッション・フルード)」との混同です。ATFは内部の湿式多板クラッチに適度な滑りと噛み合いを与える設計になっているのに対し、CVTフルードは金属対金属の強烈な圧力下で「滑りを極限まで抑制する特殊な摩擦係数」を持たせています。もしCVT機構に誤ってATFを注入した場合、金属ベルトがプーリー上で激しくスリップを起こし、わずか数キロから数十キロの走行で接触面が削れ飛び、トランスミッション全損という致命的な故障を引き起こします。
さらに近年は、燃費性能向上を目的に極限まで粘度を下げたトヨタ純正CVTフルード(FE規格やTC規格など)のように、メーカーや年式ごとに厳密な専用規格が指定されています。粘度特性や添加剤配合がわずかに異なるだけでも、内部の油圧バルブのレスポンスやチェーンベルトの噛み合いに狂いが生じるため、エンジンオイルのような「汎用的な社外品を適当に選ぶ」行為は極めて危険です。